土曜日, 11月 28, 2009

『八日目の蝉』

図書館に予約して約2ヶ月・・・。
ようやくゲットできた角田光代さんの『八日目の蝉』。
あっという間に読みきった。

角田光代さんの小説・・・、何冊読んだんだろう?
何となく彼女のストーリーの描き方の傾向がわかってきた。

主人公はもちろんの事、脇役達もきちんと主張していたりする内容が多い。
「あれっ?誰が主役だったんだっけ?」なんて思う事もしばしばだ。

この『八日目の蝉』もずっと主人公だと思っていた誘拐犯の女性の視点から、後半になると誘拐された子供側の視点へと変わっていったりしながら、最後の最後にまた誘拐犯の女性の視点に戻るといったもので、それぞれの立場での心模様が実によく描かれている。

ストーリーとしては、不倫相手の赤ん坊を誘拐し逃亡を続ける女のお話が中心だ。
カルト宗教団体にもぐりこんだり、見知らぬ島に身を置いたりしながら逃亡生活を続けていくという内容で、最初はずいぶん突飛な設定だな?なんて思いながらも読みすすめるうちに、なんだかこれってノンフィクション?とか、この作家の実体験?なんて思いはじめる。
実に真に迫ってくるのだ。
自分も逃亡しているような錯覚に陥ったりして・・・。

そもそも自分が不倫相手の子供を産めなかったとはいえ、不倫相手の妻が産んだばかりの子供を誘拐するだなんて、この主人公、かなり身勝手な女である。

なんだけど・・・?
血もつながっていない子供へのものすごい愛情に胸を打たれて、思わず涙してしまいながら・・・?、でも、「おい、おい、この女って、誘拐犯なんだよねー?」なんて思いなおして、流した涙に複雑な思いを感じたりして・・・。

この小説を読んで・・・。
犯罪人というものはもちろん許されるものではないけど、ごくまれに・・・、犯罪を犯した側に同情すべき点がかなりあったりする場合もあるのかもしれない・・・とか、親のえごで何も知らないまま、子供がカルトの中のかたよった考え方の中で育てられるという恐ろしさとか、子供の頃に受けたさまざまな経験や感情がその後の人生にどれほど大きく影響し続けるのか・・・とか、親というものの責任とか、子供と親の関係とかほんとにいろいろな事が心に深く重く残った気がした。

それにしてもいつも思うけど、角田光代さんの小説のストーリー展開は、毎回、ドキドキさせられる。
どんどん追い詰められるというか、文章を目で追いながら心臓がドクドク音をたててるのがわかる時があったりして・・・。
それぞれの人間のそれぞれの立場での心の奥底~動きがほんとに細かく描かれていて、ほんとにほんとにすごい作家だなー!!!

先日、年下の方と結婚されたようだけど、これからも角田光代さんには面白い作品をどんどん書いてほしいなー!!!