土曜日, 5月 02, 2009

「森に眠る魚」(角田光代著)やっとこさ読めました!

去年から気になっていた小説。
一冊は、谷村志穂さんの「スノーホワイト」、そしてもう一冊が、角田光代さんの「森に眠る魚」。
何度か本屋さんで探し当て、手に取りざっと読んでみる。
どちらも面白そうだ。
ただ、買ってまでは・・・。
そう思い、図書館で借りる事にしようと検索してみる。
どちらもあるにはあるが、予約がいっぱいで・・・。
「スノーホワイト」の方は二、三ヶ月待てば借りられそうだったが、「森に眠る魚」の方は予約件数が400以上あり、数ヶ月待っても借りられそうにもない。
税抜きで1500円かー、思ってたより安いなと思い、思い切って数日前に購入した。
2000円以上はするかと思っていたが・・・。

数年前に文京区の有名私立幼稚園の母親が起こした殺人事件を参考にして書いたという小説。
5人の母親の心の内部が実に鮮明にかつ繊細に描かれている。
一見、親しげで楽しげな母親達。
しかし、徐々にそれぞれの心が入り乱れ、すれ違い、離れていく。

私も、上の子は公立幼稚園、下の子は私立幼稚園に通わせたし、小学校の受験や中学受験もちょっぴり経験したし、回りにいた母親達とここに登場する母親達を重ね合わせたりして・・・。
登場する5人の母親はどのタイプも、「いるいる・・・、そう、あの人にそっくり。」なんて・・・、思わせる。
私はこの中の誰かに当てはまるかしら?
・・・?、たぶん、どれにも当てはまらないかもしれない。

私の場合は出産年齢が高かったせいか、公園デビューとかママ友なんて全く気にもせず、フツーに公園にいて、つるんでたグループはいたけど、無理してかかわろうとも思わなかったからとても気が楽だった。顔見知り程度で挨拶を交わす人がいればそれで良かったし・・・。
上の子は最初は目黒区の幼稚園に入り、その年の末に引越しとともに世田谷区の幼稚園に転園した。
下の子は、すぐ近くに私立幼稚園があったので、何のコネも情報もなかったけれど、冷やかし半分に受けてみようか夫と相談し、願書を取り寄せ受験したらあっさりと受かってしまった。
今となっては、どの幼稚園も小学校も良い思い出だった様な気がするが、よくよく思い出してみるとほんとにいろんな事が脳裏に蘇る。

自分が劣っていようが、否定されようが、無視されようが、仲間はずれにされようが構わないのだけど、我が子が・・・となるとそうもいかなくなる。
そして、独身であれば許せる事も母親としてどうよとなるとそうもいかない事が多くなる。
育児とかしつけとかって一人一人ほんとに考え方ややり方は実にさまざまで、誰が正しいのか、どんなしつけが正しいのか、答えは見つからない。
もし、答えがあるとするなら、子供たちが成長し、立派な大人になっているかどうかなのか?

数年前に起きた文京区の事件をテーマにしているというふれこみだったからか、てっきり私は、登場する5人の母親たちのうち誰かが誰かの子供を手にかけるのかと思い込んでいた。
いったい誰が?、ずっと、誰?だれ?だれー?なんて、人間関係が交錯していけばいくほど、ドキドキしながら読んでいた。
しかし、結局、事件らしい事件は起きず、少し前向きな感じで締めくくられた内容に、なんだか少し、(不謹慎なのかもしれないけど)、何か起きてほしかった様な・・・、あっけない様な・・・。
実際の事件の被害者や加害者に配慮したのかもしれない。
とは思いつつ、これはノンフィクションではなく、フィクションなんだから・・・とも思ったり・・・。
もう少し衝撃が・・・、パンチ・・・が欲しかった様な・・・。

妊娠=母親学級~出産=定期健診~児童館=育児教室~幼稚園~小学校・・・、母親同士の関わりの中でほんとにいろんな事があり、泣いたり笑ったり、傷ついたり勇気付けられたり。

みんな、一見仲が良さそうでも、内心どう思っているかなんてほんとわからない。
子供同士が仲が良いから仕方なくつきあってる場合とか、とにかくべったりと四六時中親子同士でつるんでるとか、あまり人と接したくないとか、いろんな母親がいて、いろんな子供がいて・・・。

子供のためにと我慢したり頑張ったりし過ぎると精神的に良くないとわかっていてもやっぱり子供のために何かしてあげたいと思う母心。
こればっかしは親になってみないとわからない。

下の子が小学校に入学し、一学期が終わり、小学校生活にも少し慣れた頃にパートを始めた私。
仕事が忙しくて学校にはあまり関わっていられないし、その分、同級生の母親達ともほとんど接触できないが、この状態が一番精神的には良いのかもしれない。
人間関係のわずらわしかった学校内の部活も辞めさせ、今は、外部の陸上クラブに通わせているため、
毎月の出費は痛いし、送り迎えに見守りに疲れるけれど、とても気は楽ちんだ。

これからは、息子の高校受験、娘の中学受験、それが終われば、息子の大学受験、娘の高校受験~大学受験、そして、二人が無事に就職し、そのうち良い伴侶とめぐり合い、幸せな家庭を築く事が出来れば、ようやく親のつとめが果たせたと言えるのかな?

「森に眠る魚」の表紙になっている森の中の木々のトンネルが、果てのない様な育児を象徴している様で。
もうすぐ私は、奥深い森を抜け出し、青い空とぎらぎらと照りつける太陽の下、まっ青でおだやかな海の見える丘にたどりつけるだろうか・・・。